みえるということ-始まり-

窓から差し込む光、空の蒼。

 

ささやかで、しかし、得難い幸運に、深く、深く、感謝する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年9月17日

 

「大変危険な状態です。」

 

医師のその一言で、私の日常は一変した。

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年9月15日 3日前

 

異変に気づいたのは、朝、右目にコンタクトをつけようと左目を閉じたときのことだった。

 

「あれ?」

 

右目の視界が、わずかに狭くなっているように感じた。少し疲れているのかな?そのときは、そう思った。

 

 

 

 

2017年9月16日 2日前

 

朝のニュースで、網膜剥離の特集を行っていた。内容は、確か、人気俳優Kが網膜剥離の手術を受けること。ボクサー特有の病気のイメージが強いが、誰にでも発症する可能性があること。不安な人は、片目を閉じて視界を確認してみるとよい。といったような内容だったと思う。

 

思う、というのは、きちんとみていなかったからだ。その日は、大切な会議のことで、頭がいっぱいだった。

 

 

 

2017年9月17日 当日

 

朝起きて顔を洗う。ふと、昨日のニュースが頭をよぎった。まさかな、そう思いながら、左目を閉じ、右目の視界を確認する。

 

「えっ。」

 

思わず声が漏れた。右目の半分の視界は、真っ黒に塗りつぶされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変危険な状態です。」

 

・・・。

 

?。

 

「視力を司る黄斑まで剥離が進行しています。一刻も早く手術を行わなければ、失明の可能性があります。」

 

・・・。

 

?。

 

失明??

 

・・・。

 

??。

 

「今すぐ入院の手続きを行ってください。」

 

・・・。

 

・・・。

 

・・・。

 

???。

 

頭の中がぐにゃぐにゃする。

 

・・・。

 

・・・。

 

「佐藤さん?・・・。」

 

「佐藤さん!聞いていますか!!」

 

・・・。

 

・・・。

 

「はっ?はい!」

 

医師の問いかけに、はっ、と我に返った。

 

「歩行の衝撃でも、剥離が進行してしまいますので、これからは、車椅子を使用して下さい。それでは、こちらへ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして、私の入院生活が始まった。